フランシスカン・デフセンター奨学金プロジェクト訪問

海外宣教委員会はフランシスカン・デフセンター奨学金プロジェクトの奨学金授与と視察のため7月5日から12日まで、フィリピンとフランシスカン・デフセンターと兄弟佐藤宝倉を訪問しました。今回も、カルバイヨグの公立小学校、CKC高校を訪問し、奨学金受給者と保護者に会うことができました。また、工事が終わった教室の様子やセンターの経費削減対策を視察することができ、センターの運営状況が現在のところ順調であることや奨学金受給者の進級も順調なのを確認できた点で収穫の多い訪問でした。

image奨学金受給者は年々口コミで広がっています。地元の聾者の受給者が増えたのです。これは、地元の公立小学校の奨学金受給者です。児童や学生が学ぶサマールのカルバイヨグ市では、地元の児童は市内の公立の小学校の聾のクラスで学ぶことがができます。そのため、家から通える生徒は、小学校の聾者クラスに通います。
しかし、市外で通学が困難な児童は、親戚、兄弟の家に下宿し、私立のクライスト・キング・カレッジ(以下CKC)の付属小学校にある聾のクラスに通わなければなりません。また、公立の小学校を卒業しても高校の聾クラスは地元にはCKCしかないため、高校からはCKC付属高校・聾クラスに通うことになります。

奨学金受給者や就学状況については、海外宣教委員会でも監査は行いますが、フィリピンの文科省に当たる機関の監査もセンターとセンター利用者の家を対象に行われているので、奨学金の不正受給などはなく、日本からの奨学金支援は全て授業料と学校に納める交通費、教材費として支払われていました。しかし、通学するにしても、学校でかかるその他の諸費用を捻出できない家庭のために、何らかの支援が必要ですが、資金難がいつも頭の痛いところです。image

また、継続した課題として、高校、大学を卒業しても就職するためには、ハンデがあるので、職業訓練や研修が必要な点です。兄弟佐藤は、日本から運んだミシンを利用して刺繍や縫製などの簡単な仕事を覚えることを計画しています。また、いつの日かデフセンターの教員や職員が、日本で研修が短期でもできて、技術的なことや聴覚障害者の教育の方法論などを実際に体験できれば、技術や意識の向上にもつながるだろうとのことでした。実際に、スタッフは、狭い人間関係や業務に追われる日常から、香港での研修で意識や技術面で向上した前例があるので、聾教育先進国での研修は大きな意味があるようです。センターの運営については、光熱費の削減の為の設備の改善が継続されていました。たとえば、キッチンをガスからかまど式のオーブンに変えることは徹底していますし、水道も一部を井戸水に変え水道代の節約が継続されています。 また、経費の中で大きい部分が備品の買い替えなのですが、買い換える理由で多いのが備品の盗難による買い替えです。これを防ぐためにフェンスの拡張も終わり盗難も減少しています。

センターの教室の改修工事も順調でした。JOMAS (海外邦人宣教者活動援助後援会)の支援を申請した、視聴覚教室および多目的ホールの工事が完成し、地域に開かれたデフセンターに一歩近づきました。講演会や聾の子供たちの親族が集会やセミナーを行えるスペースになりました。聴覚障害の機材を設置して授業が行えるほか、これらの機材を全て可動式にしたことで多目的な教室として使えることで、デフセンターとして地域の聾者の必要にも答える可能性が広がりました。

支援プロジェクトの中でも核となっている奨学金プロジェクトは、5期目に入り、小学生だった生徒も高校生になるなど、奨学金受給者の成長や、勉学や学校生活を謳歌している姿を見るのは、訪問する楽しみの一つです。いつも聞くことなのですが「学校は楽しいですか?」の質問に「楽しい!」と手話で答えてくれるのには新鮮な驚きがあります。というのは、日本で同年代に同じ質問をした場合こうした同じ答えが返ってくるかどうかわからないからです。学生達は今が楽しいと答える背景には、手話を学ぶ前の苦しい生活があったのもあるため、日本と比較できないのですが、支援を通じて、開発途上国の教育問題の課題も見えてきます。成長という点では、同じく奨学金で大学に通い、聾学校の教員資格を取得し、今年からセンターで働くことになった卒業生の姿は、大きな希望であり継 �続することの大切さを考えさせられました。

(報告:海外宣教委員会)